ムーニーのCMが、「ワンオペ育児」を賛美しているという指摘を受けて炎上しているらしい。
コアトルも気になって問題のCMを見てみました。
先に、世間からのこのCMや、ムーニー製造元のユニチャームへの批判内容をまとめておきますと、
・ワンオペ育児を美化、賛美している。
・育児は女性がするものであるという社会的なステレオタイプを助長している。
・競合のP&Gに比べて女性の取締役が圧倒的に少なく会社としても問題がある。
などでありました。
もっとも私はツイッターでこの炎上事案を知りましたが、その時は特に内容も見てなかったので、余程酷い内容で、
擁護の声などもないのであろうと思っておりましたが、実際には賛否両論というのが正しいようで、コアトルのように擁護する声も多くあったようです。
ちなみに競合企業であるP&GのパンパースのCMへは逆に賞賛の声が向けられているようでありました。
個人的に申し上げれば、こちらの方が余程現実性を歪曲していて、空想的な仕上がりで感動も全くなく、心に響くものはないと感じました。
ユニチャームの意図はよく理解できる
ユニチャーム社は本件について、「本来の意図はリアルな日常を描き、応援したいという思いだった」とコメントしていますが、全く私が見た印象と同じでした。
実際のところ、家事を含めて男性の協力水準は他の先進国に比べて日本は低い。
育児中のノイローゼやうつ病などを発症する人も多く、日本特有の長時間労働も相まって、男性の協力が得られる環境は全然整っていない。
CM自体は編集によって、父親の存在が極端に矮小化されていますが、これは母親が主観的に感じる父親の無関心さへの当てこすりにも思えて、
むしろこのCMをより印象的なものにしているように思われます。
育児で悩むお母さん達の共感を得るとともに、育児の現実を世間に共有したかったというユニチャームの意図は非常によく理解できるのです。
しかもユニチャームは伝統ある日本の企業。方やP&Gは外資系の企業です。
紙おむつの市場シェアで言えば、国内ではムーニーがトップと言われており、また同時にインドや中国でも異常なほどのシェアを獲得しています。
P&Gやキンバリー・クラークと言った巨大多国籍企業と対等に戦う日の丸企業を貶めて、外資系の企業を称賛するなどを見るにつけ、
少しばかりの愛国心も発揮できないのかと、この炎上事件を見て非常に悲しい気持ちになりました。
炎上の元凶はフローレンスの駒崎氏
コアトルはあまり特定の個人のことを悪くいいたくないのですが、今回のユニチャームの一件は、明らかにオピニオンリーダーの一人である、
フローレンスの代表の方のポジショントークが大きな原因の一つではないかと思います。
感動ムービーのつもりで作っているのだろうが、ワンオペ育児賛美にしか見えない。
おむつ会社なら、「母親は1人で頑張るべきだし、それが美しい」という社会的抑圧と戦うべきだ。
そういう抑圧が、産後鬱を生み、児童虐待を生み、少子化を生むのだから。
ムーニーのCMをよく見ればわかりますが、母親の方は明らかに泣き止まない子供に呆然として、産後うつを象徴するシーンもありますし、
夜泣きなどを繰り返す赤ちゃんに嫌気がさし、泣きそうな顔になって困っているシーンも多くあります。
母親が育児のほとんどを担うことをワンオペ育児というのであれば、ムーニーのCMは決してそれを賛美するものではないということは、
冷静に見れば誰だってわかります。
フローレンスの活動自体は高邁なもので、その思想や活動は応援していますが、今回の発言はやはりポジショントークとみられても仕方がないように思います。
そもそも紙おむつの市場は日本だけをみても、ユニチャームやP&Gの他、花王、大王製紙、王子製紙など競争が激化しています。
その中で差別化を測る必要があり、またマーケティング戦略で一枚上手のP&Gとは特に差別化を図らなければならないという事情もあったのではないかと推測するわけですね。
繰り返しになりますが、P&GのCMの方が余程現実を美化していて、奥歯が痒くなります。
リベラルであればなんでも評価される、というのはトランプ大統領誕生や盤石な安倍政権の反動なのかもしれませんが、
当たり障りの良い、耳障りの良いものだけを評価する風潮には、むしろ危険なものを感じるのです。
だいたいP&Gの洗剤のCMだって、いつもお母さん役の人しか出ないし、一昔前の「私作る人、僕食べる人」を彷彿とさせるような構成なのに、
その辺りはあまり批判しない世間というのも不公平に思います。
最近は電通事件もあって、長時間労働対策が政治の世界でアジェンダセッティングされるなど、かなり風向きが変わってきたと思います。
確かに女性の社会進出など、他にもまだまだ日本社会には課題があるのも事実ですが、問題への主張のために日本企業をダシにするのはあまり好感が持てません。
ユニチャームについては、日本を代表するグローバル企業の一つとして、どんどん海外に進出して成長を続けて欲しいと思います。