ユダヤ教における食事規定について タブーとカシェル認証とは

geralt / Pixabay
コアトルの宗教探求

ユダヤ教は、その歴史、成り立ちに関して、他の宗教とはかなり一線を画したものと言えますが、ユダヤ教徒の敬虔さ、というのも、もちろん人によって差はあるものの、考慮の価値があると思います。

 

事例として以前、あの有名ユダヤ人大富豪のロスチャイルド家中興の祖、マイアーアムシェルロスチャイルドに関するエピソードを取り上げました。
ユダヤ人大富豪 マイアーアムシェルロスチャイルドの異常な敬虔さを表すエピソード

 

さて、ユダヤ教と一口に言っても、その聖典、経典一つとっても簡単に割り切れるものではありません。

 

ユダヤ教にとって最も根幹をなすのは、所謂トーラー(モーセ五書)と呼ばれるものでして、すなわち

創世記
出エジプト記
レビ記

民数記

申命記

の5書のことです。

ただ、我々の言うユダヤ教の聖書としての旧約聖書は、これ以外にもサムエル記や箴言など、多くの書物で構成されます。

また、これらの他にも、口伝律法と呼ばれるトーラー全60数巻もまた、多くのユダヤ教徒にとって聖典であるとみなされています。



ユダヤ教の食事規定概観とカシュルート

で、本題のユダヤ教の食事規定についてですが、上で述べたような書物の中に、食事に関する規定が完全にまとまった形で存在するわけではないのです。

 

ただし、旧約聖書やタルムードの中には、神による食事規定に関する記述が多く出ております。

 

例えば、創世記においてはこう言う記述があります。

主はノアに言われた。 「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。
あなたは清い動物をすべて七つがいずつ取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい。
空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。
七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」
ノアは、すべて主が命じられたとおりにした。
出典:創世記 第7章1-5節

この主の(神の)言葉に対して、聞き手のノアは「清い動物とはなんですか?」などと問い返してはいないことから、古代イスラエルにおいて、すでに清い、清くない動物の分類が、一般常識として存在していたことを伺わせています。

 

その後、レビ記では、この清いと清くない動物について、より具体的に記述されるようになりましたが、それでも現代における規定ほど詳細ではありません。
参考のために少し長いですが、引用しておきましょう。

11:1主はまたモーセとアロンに言われた、 11:2「イスラエルの人々に言いなさい、『地にあるすべての獣のうち、あなたがたの食べることができる動物は次のとおりである。 11:3獣のうち、すべてひずめの分かれたもの、すなわち、ひずめの全く切れたもの、反芻するものは、これを食べることができる。 11:4ただし、反芻するもの、またはひずめの分かれたもののうち、次のものは食べてはならない。すなわち、らくだ、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。 11:5岩たぬき、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。 11:6野うさぎ、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。 11:7豚、これは、ひずめが分かれており、ひずめが全く切れているけれども、反芻することをしないから、あなたがたには汚れたものである。 11:8あなたがたは、これらのものの肉を食べてはならない。またその死体に触れてはならない。これらは、あなたがたには汚れたものである。
11:9水の中にいるすべてのもののうち、あなたがたの食べることができるものは次のとおりである。すなわち、海でも、川でも、すべて水の中にいるもので、ひれと、うろこのあるものは、これを食べることができる。 11:10すべて水に群がるもの、またすべての水の中にいる生き物のうち、すなわち、すべて海、また川にいて、ひれとうろこのないものは、あなたがたに忌むべきものである。 11:11これらはあなたがたに忌むべきものであるから、あなたがたはその肉を食べてはならない。またその死体は忌むべきものとしなければならない。 11:12すべて水の中にいて、ひれも、うろこもないものは、あなたがたに忌むべきものである。
11:13鳥のうち、次のものは、あなたがたに忌むべきものとして、食べてはならない。それらは忌むべきものである。すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、 11:14とび、はやぶさの類、 11:15もろもろのからすの類、 11:16だちょう、よたか、かもめ、たかの類、 11:17ふくろう、う、みみずく、 11:18むらさきばん、ペリカン、はげたか、 11:19こうのとり、さぎの類、やつがしら、こうもり。
11:20また羽があって四つの足で歩くすべての這うものは、あなたがたに忌むべきものである。 11:21ただし、羽があって四つの足で歩くすべての這うもののうち、その足のうえに、跳ね足があり、それで地の上をはねるものは食べることができる。 11:22すなわち、そのうち次のものは食べることができる。移住いなごの類、遍歴いなごの類、大いなごの類、小いなごの類である。 11:23しかし、羽があって四つの足で歩く、そのほかのすべての這うものは、あなたがたに忌むべきものである。
11:24あなたがたは次の場合に汚れたものとなる。すなわち、すべてこれらのものの死体に触れる者は夕まで汚れる。 11:25すべてこれらのものの死体を運ぶ者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れる。 11:26すべて、ひずめの分かれた獣で、その切れ目の切れていないもの、また、反芻することをしないものは、あなたがたに汚れたものである。すべて、これに触れる者は汚れる。 11:27すべて四つの足で歩く獣のうち、その足の裏のふくらみで歩くものは皆あなたがたに汚れたものである。すべてその死体に触れる者は夕まで汚れる。 11:28その死体を運ぶ者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れる。これは、あなたがたに汚れたものである。
11:29地にはう這うもののうち、次のものはあなたがたに汚れたものである。すなわち、もぐらねずみ、とびねずみ、とげ尾とかげの類、 11:30やもり、大とかげ、とかげ、すなとかげ、カメレオン。 11:31もろもろの這うもののうち、これらはあなたがたに汚れたものである。すべてそれらのものが死んで、それに触れる者は夕まで汚れる。 11:32またそれらのものが死んで、それが落ちかかった物はすべて汚れる。木の器であれ、衣服であれ、皮であれ、袋であれ、およそ仕事に使う器はそれを水に入れなければならない。それは夕まで汚れているが、そののち清くなる。 11:33またそれらのものが、土の器の中に落ちたならば、その中にあるものは皆汚れる。あなたがたはその器をこわさなければならない。 11:34またすべてその中にある食物で、水分のあるものは汚れる。またすべてそのような器の中にある飲み物も皆汚れる。 11:35またそれらのものの死体が落ちかかったならば、その物はすべて汚れる。天火であれ、かまどであれ、それをこわさなければならない。これらは汚れたもので、あなたがたに汚れたものとなる。 11:36ただし、泉、あるいは水の集まった水たまりは汚れない。しかし、その死体に触れる者は汚れる。 11:37それらのものの死体が、まく種の上に落ちても、それは汚れない。 11:38ただし、種の上に水がかかっていて、その上にそれらのものの死体が、落ちるならば、それはあなたがたに汚れたものとなる。
11:39あなたがたの食べる獣が死んだ時、その死体に触れる者は夕まで汚れる。 11:40その死体を食べる者は、その衣服を洗わなければならない。夕まで汚れる。その死体を運ぶ者も、その衣服を洗わなければならない。夕まで汚れる。
11:41すべて地にはう這うものは忌むべきものである。これを食べてはならない。 11:42すべて腹ばい行くもの、四つ足で歩くもの、あるいは多くの足をもつもの、すなわち、すべて地にはう這うものは、あなたがたはこれを食べてはならない。それらは忌むべきものだからである。 11:43あなたがたはすべて這うものによって、あなたがたの身を忌むべきものとしてはならない。また、これをもって身を汚し、あるいはこれによって汚されてはならない。 11:44わたしはあなたがたの神、主であるから、あなたがたはおのれを聖別し、聖なる者とならなければならない。わたしは聖なる者である。地にはう這うものによって、あなたがたの身を汚してはならない。 11:45わたしはあなたがたの神となるため、あなたがたをエジプトの国から導き上った主である。わたしは聖なる者であるから、あなたがたは聖なる者とならなければならない』」。
11:46これは獣と鳥と、水の中に動くすべての生き物と、地に這うすべてのものに関するおきてであって、 11:47汚れたものと清いもの、食べられる生き物と、食べられない生き物とを区別するものである。
出典:レビ記11章

こう言った、聖書の随所に散りばめられた神の食事に関する要請などをまとめたものがカシュルートと言う規定です。

 

また、カシュルートに適合する食事全般を便宜上カシェルあるいはコシェルと読んでいます。

 

次に、このカシェルとカシェルではない、タブーとされている食べ物について具体的に見ていきましょう。




ユダヤ教徒の食べていいものダメなもの

上のレビ記の規定やその他のタルムードによって規定された、タブーな食べ物をまとめます。

反芻しない、もしくはひづめが完全に分かれていないもの

即ち、野ウサギ、豚、イワダヌキ、ラクダ、イノシシ、馬、ロバなどの動物で、この結果ユダヤ教徒に豚料理を出すのは避けるべきでしょう。

「反芻」と言うのは一度食べたものをもう一度口に戻してもぐもぐ食べる動物で、イメージがつきやすいのが牛や羊です。
こう言う動物は反芻するので、蹄が分かれていれば食べてOKです。

地上を這い回るもの

即ち、モグラ、トカゲ、カメレオン、ヤモリ、ネズミ、リクガメ、トビネズミ、カタツムリなどです。

諸々の這うものは食べてはいけないと、先ほど引用したレビ記の11章29節から30説に記載がありますね。カタツムリもダメなので、エスカルゴも含まれると考えた方がいいでしょう。

四本の足で歩く動物のうち、肉球のあるもの

即ち、猫、ライオン、狼、などであります。

この辺は現代日本人も食べないので、特に違和感はないと思います。(というか日本人は食にタブーがなさすぎますよね。。。別に悪いことではないですが。)

翼のある汚れた生物

こちらは可哀想にも多くの鳥が神ヤハウェによって汚れたものとされています。ちょっと多いのでウィキペディアから引用しておきましょう。

ワシもしくはハゲワシ
ヒゲワシもしくはミサゴ
ミサゴもしくはクロハゲワシ
ハゲワシもしくはトビ
トビもしくはハヤブサ
ワタリガラス
フクロウもしくはダチョウ
ヨタカ(七十人訳、Night Hawk)もしくはメンフクロウ
カッコウ(欽定訳)もしくはカモメ
タカ
小さいフクロウ(en:Little Owl)

大鴉(Great Owl)もしくはトラフズク
ハクチョウ(ウルガタ訳、七十人訳では「紫色の鳥」)
ペリカン
エジプトハゲワシもしくはミサゴ
コウノトリ
サギ
タゲリ(欽定訳)もしくはヤツガシラ
コウモリ
出典:ウィキペディア

海や川・湖に住む生き物で、ヒレと鱗のないもの

即ち、タコ、イカ、エビ、ナマズ、貝類

日本人が大好きなタコやアワビ、ホタテ、牡蠣は、ユダヤ教ではNGです。

羽があり4足で動き群れるもののうち、地面を跳ね回ることのないもの

即ち、バッタ以外の昆虫全て。

昆虫は本来6本足ですが、古代イスラエル人は、昆虫の足のようなもの6本のうち、前の二本は手だと考えていたのではないかと思われます。
この部分、バッタ類は全部食べて良いとするか、そうでないかは少し議論がありますが、日本で来客をもてなすに当たって昆虫料理を出すことはないでしょうから、それほど注意することはありません。

以上がユダヤ教でタブーとされている食品群で、それ以外はカシェル、食べて良いものとされていますが、一方で、他にも調理手続きや食べ合わせ面で、注意点があります。

その他の食事に関するタブー

レビ記や出エジプト記の規定により、「野外で獣に裂き殺された動物の肉」や「自然に死んだ動物の肉」も食べてはいけないとされています。

 

また、狩りで捕獲された動物は、仮に汚れた動物ではなくても食べてはいけません。

 

また、血を摂取することもNGですので、レアで焼いたステーキもNGです。

 

また、出エジプト記23章19節における有名な記述「子やぎをその母の乳で煮てはならない」によって、乳製品と肉を一緒に食べることも多くの場合禁じられています。

カシェルと食の安全

最後に、少し違った視点から、ユダヤ教の食事規定を考えてみましょう。

 

最近、食の安全というものに関する消費者の目が厳しくなってきています。

 

本来カシェルは、ユダヤ教の食事規定に違反しない、という意味の注釈ですが、カシェルの認定を受けるためには相当厳格な試験をクリアしなければなりません。

 

このように、厳格な監視のもとで生産された食べ物はトレーサビリティもしっかりしていますので、非常に安全な食べ物とも言えるのです。

 

あなたがユダヤ教徒でなくても、食の安全に不安を感じているようなら、カシェルマークのある食べ物を買うようにするといいかもしれません。