周囲に流され易く思考停止に陥りがちな人の心理 騙され押し売りに負けない為の対策

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コアトルの心理学探究

いつも周囲に流される人がいる。

「友達がヨガにいっているから私も行きたい」

「遊戯王カードが流行っているから僕も欲しい」

「皆ポケモンGOをやってるから自分もスマホが欲しい」

こういった心理は至る所にあるわけですが、これを悪用してお金儲けに活用する人達がいる事を忘れてはいけません。

例えば世界有数の多国籍企業であるP&Gによるマーケティング戦略に、その一端をかいま見ることが出来ます。

P&GのCMには、芸能人ではなく普通の主婦が登場しますよね?

佐藤さん(仮名)

「あ、びっくりした!モニター調査ですか!?ちょっと家が散らかってるんですけど、、、」⬅もちろんサクラですが。

とかなんとかいって調査員が家に押し入って、新商品の食器洗い洗剤等を使ってもらう。

「え!すごい」とかなんとか、兎に角その商品がいかに素晴らしいかが伝わるようなグッドリアクションをして、その商品の販売促進を実施する。

こういうCMはつまり、周囲に流され易いあなたの様な人をターゲットにした戦略的コマーシャルであって、等身大の人が評価する印象を与える事で、つい手に取ってしまうようにしむけられるわけですね。

こういった例は枚挙に暇が無いですが、心理学的用語でいうとこれを社会的証拠と言います。



社会的証拠

社会的証拠というのは、概して言えば、一定の基準に基づいてランク付けがなされているものがあるならば、そのランキングが上位の事物について、盲目的に良い物であると認識してしまうことです。

私は競馬をやりませんが、競馬でも競輪でも、倍率、オッヅというものがありますね。

競馬なら、勝つ可能性が高い馬ほど掛け金に対する倍率は一般的に低くなります。

ところが、本当に競馬に詳しく、お金持ちの人はこれを悪用することが出来ます。

まずは賭けが始まってすぐ、全然勝つ見込みの無い馬に大金をかけます。
そうすると、賭けが始まってすぐの状態では、累積の掛け金が少ないですから、お金持ちで競馬に詳しい人による掛け金に引っ張られて、その馬の倍率が極端に低くなります。

それをみた無知な多くの競馬好きは、その馬は今日勝つ可能性が高いのだろうと思い、どんどんその本当は勝つ見込みの無い馬に掛け金を集中させます。

その結果増々その馬の倍率は下がって、所謂一番人気に近づいていく。

さて、悪巧みをしたお金持ちは、最後の賭け受付の終了間際に、本当に勝つ見込みのある馬に、最初に掛けたお金の何倍ものお金をつぎ込みます。

これによって、この人は遥かに効率的に、しかも多くの人からお金を巻き上げることが出来るというわけです。

ちょっと現実感の無い例だったかもしれませんが、ランキングじゃなくても、「皆が使っている」という印象を与えることは、営業面において非常に重要です。

皆使っているよ♪と効果的にアナウンスすることで、他にもっと安くて良い商品があっても、それには目をくれずにアナウンスされた商品を買ってしまう。。

何故こういった悲劇がおきるのでしょうか?

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社会的無知

この悲劇が起きる理由を説明するのに使われるのが社会的無知、というキーワードです。

社会的無知、というのは、不確実性がある場合、人間は無意識的に民主的判断を下してしまうという傾向を指しています。

多くの人で混雑した街中を歩いているとき、急に銃声っぽい音がしたとしましょう。

あなたはびっくりしたけれども、周りの人を見ると、殆どの人が平然と歩いているを見る。

これを見るとあなたは少し恥ずかしくなるはずです。

「銃声だと思ってびっくりしたけど、他の人は平然としているということは、あれはきっと風船が割れる音だったのかしら。そうだとしたら、自分は田舎者だな、恥ずかしいな。。」

しかし実はその音は確かに銃声だったのです。だからあなたは正しかったのですが、周りの多くの人が、それに気を止めなかったばっかりに、必要も無いのに自分を責める事になる、という可能性は、この世の中には往々にしてあるのです。

人はよくわからないとき、周囲に従うことでとりあえず乗り切れる、ということを経験的に知っています。

そしてそうすることによって、考えなくても良いことを考えず、より抽象的な思考をすることが出来る、という利点もあるのですが、やはりこれを悪用して、先ほどのように営業活動やマーケティング活動や、陰謀を張り巡らせる人がいる。

最近で言うとNHKの受信料も同じようなものかもしれません。

公共の料金ですよ、と水道代や電気代、あるいは所得税や住民税と同じような扱いであるかの用に受信料を請求しますが、厳密には異なりますね。

また私個人の例で言うと、免許の更新時に交通安全協会なるよくわからない団体への寄付金を求められた時の事です。

免許の更新にいくと、更新料を払う窓口で、熟練のオバさんがまくしたてるように、

「更新料と合わせて○※×■○〜×−協会へのキョーさん金5000円を皆様に頂戴しております。」

と呪文のように唱えてきました。

「皆様お支払い頂いているので、、」という押しに私は抗しきれず、ついに5000円を払ってしまいました。

別に公徳心が無いわけではないのですが、こういうやり方だとやはり騙されたような気がしてしばらく気分が悪かったのを覚えています。

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思考停止は悪か

思考停止、というのは最近は相当程度ネガティブな意味合いで使われます。

しかし先ほども述べたように、思考停止、というと言い方が悪いですが、直感的に周囲の多数に従うことで、特に考える事なく正しい行動をとる事が出来る場合も非常に多いのです。(社会的無知)

こういう利点を無視して、一々全ての事について熟慮し、決断をしているようでは、いくら時間があっても足りません。

重要なことは、便利な社会的無知と、そうでなく自分の頭で考えることの使いわけをきちんとする、と言う事です。

特にこれまでの自分の経験のなかでは体験した事が無い状況下で、瞬間的な判断を求められる場合は、一歩立ち止まる癖をつけた方が良いかもしれません。

上述の適当男コアトルの記述は、殆どロバート・B・チャルディーニ氏の影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのかによるところが大きいのですが、氏はこの著書の中で、もし自分が、社会的証拠や社会的無知のせいで、損な決断をしそうになった場合、胃からシグナルが出る、と述べています。

既に学会で実績がある、極めてアカデミックな博士が、胃からのシグナルという少しオカルトちっくな言葉を使っているのは面白いところですが、人は不利な決断へ誘導される場合、必ず胃のあたりからもぞもぞっとする信号が送られるから、それを感じた場合は、まず相手の提案を断って間違いないと言うわけです。

私も思い返せばそういう経験はありますし皆さんもきっとあるかと思います。

押し売りに負けそうになった時や、よくわからない寄付活動に加担させられそうになったとき、まずは体の信号を重視した上で、冷静な判断をするように心がけると良いかもしれません。