メンタルが弱いとは具体的に何を指すのか 原因によっては根本的な改善が難しい

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人生の悩み

メンタルが弱い、という言葉をよく聞きますが、この言葉にはいろんな側面が含まれているとコアトルは思います。

 

プレゼンが嫌いだからメンタルが弱い、という人がいるとしましょう。(多分結構いると思います)

 

しかしプレゼンが嫌いな理由としても、ちょっと思いつくだけでもたくさん想定されます。

○どもり(吃音)がバレるのが怖いから
○自分の考えをうまく話すのが苦手だから
○人前で話すのが恥ずかしくて嫌だから
○自分にはプレゼンをする資格がないと思っているから
○自分の意見を否定されるのが嫌だから
・・・

などなど色々あるように思います。

 

このうち、本当の意味でメンタルが弱い、というのは「自分の意見を否定されるのが嫌だから」及び「自分にはプレゼンをする資格がない」に該当する場合だけで、

 

それ以外は根本的にはメンタルが原因ではないわけです。

 

しかし重要なことは、こういう純然たる理由(例えばどもりがバレるのが嫌だからという別のメンタル以外の理由)があるのに、

 

「メンタルが弱い」と言ってしまうのは、どもりであるという自分から目をそらしたいがために、あえて抽象的なメンタルの弱さを理由として持ち出しているように思われる。

 

こういう場合は、世の中に流布している対策を実践すれば、十分に克服可能です。

 

どもりを克服したエピソードで有名なのは田中角栄がいますし、

 

自分の考えをうまく話すのが苦手、という場合は単に準備不足、経験不足ですから、これも訓練次第で改善可能ですし、

 

前で話すのが恥ずかしくて嫌だから、も練習と経験を積むことである程度の改善が可能です。

克服が困難なメンタルの弱さ

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世の中の自己啓発本や、啓蒙系のサイトなどを見ていますと、「メンタルの弱さを克服する方法」などと称して、

 

☑️現状をノートに書き溜める
☑️散歩する
☑️朝日を浴びて見る
☑️人の悪口を言わないようにする

 

などなど、それっぽいがどういう因果関係でメンタルが強くなるのかよくわからないような、コアトルに言わせれば適当で無責任な方法が書かれています。

 

プレゼン一つ取っても、「意見を否定されることが嫌だ」と思ってしまいプレゼンが苦手な人が、

 

朝日を浴びてその状況が改善できるなどあり得ない話です。

 

こういうものに惑わされてはいけません。

 

じゃあかと言ってお前は何か克服する手段を提示できるのか、と言われると困るのですが、私は、克服は何をやっても相当難しい、と思っています。



不安の感じやすさは性格的なもの

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性格というのは遺伝的な要素が大きいと言われています。

 

もちろん環境の影響も大きいのですが、我々がここで検討しているのは、まさに今、プレゼンが嫌いだ、という問題に対して、

 

その背景に「意見を否定されるのが怖いから」という理由がある状況を検討している。

 

つまり、すでに遺伝的影響と、生育上の環境の結果として現れた状況に関して論じているわけですから、

 

これから性格を変えればいい、などという回答は誠実な答えではありません。

 

そうそう簡単に性格や環境を大きく変えることは難しい、というのは我々がもっともよく知るところです

 

すでに生まれ持った遺伝的要素と生育環境によって、「否定されたくない」という気持ちを強く持ってしまっているわけですが、

 

これはもう少し言い換えると「否定されるかもしれない」という不安が大きく横たわっていることがわかります。

 

そもそも否定などされるわけがない、あるいは少なくともそういう不安を抱かなければ、あなたのプレゼン嫌いは克服されるのですが、

 

今ある漠然とした不安を「忘れなさい」というのは無理なのです。

 

それができれば誰もうつ病にはなりません。

 

芥川龍之介も自殺することはなかったでしょう。

 

しかし漠然とした不安、そしてプレゼン前には、A係長が3スライド目のグラフについて指摘をするのではないか、、、

 

そしてその指摘は本質的にはどうでもいいことなんだが、うまい切り返しが思いつかない。。。。

 

などと、指摘をされてもいないのに延々と考えては頭から離れないのです。

 

こういう気質はうつ病リスクも高く、訓練によってもなかなか改善されない。

 

一つプレゼンが終わっても、終わってから

 

「あああ、みんなつまらなそうに聞いていた。せっかく貴重な時間をもらったのに無駄な時間を使わせた。。これで評価も下がるだろう。」

 

などと一人で勝手に暗闇の中に入ってしまう。

 

こういう性格はまず治らないと言って問題ない。

 

あんまり観念的に意見を述べると、科学的根拠がなくて怒られそうなので、少しそういう方面の見解を引用しておきましょう。

精神の安定や心の安らぎには、「セロトニン」という脳内物質が関与していることが知られている。その分泌量を調節しているのが「セレトニントランスポーター(5-HTTLPR)」という遺伝子で、SS型、SL型、LL型の3種類がある。LL型の遺伝子を持つ人は、最も性格がおおらかで楽天的、逆にSS型の人は不安を感じやすく、うつ病の発症リスクが高いことが判明している。

欧米人と比べてアジア人は、ポジティブな性格のLL型遺伝子を持つ人の割合が少なく、その中でも、日本人はLL型の遺伝子を持つ者が、全体の3%しかいない。逆に、ネガティブな性格のSS型遺伝子を持つ者の割合が、世界で最も高い民族だ。遺伝子レベルで解明される ストレスに強い人・弱い人の特性

ちょっと待て、セロトニンという言葉が出たぞ。朝日を浴びればセロトニンは増えるから、「朝日を浴びる」というのは荒唐無稽な話ではないではないか、

 

という批判が飛んできそうですが、それは認識不足も甚だしいと思われる。

 

重要なのはセロトニンの分泌量の調節なのです。

 

いくらセロトニンをたくさん作っても、それが適切に放出されなければ意味がない。

 

穴の空いたバケツに注ぐ水の量を増やしても、それと同時に穴も大きくなってしまっては、結局水はたまらないのと同じです。

 

こういう脳の構造を持っているわけですから、そもそもプレゼンなどむいていないのです。


ハーディネスという性格

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逆に、不安など全然感じず、仮に否定されてもケロッとしていて前向きに生きている素晴らしい性格の人もまた存在することもわかっています。

 

それがハーディネスという特性です。

ハーディネス(Kobasa, Maddi, & Kahn, 1982)
高いストレスの下でも健康を保つ人が持つ特性。3つの要素から成る。

1) コミットメント
何事に対しても自分自身を没頭させるような傾向。自分の生活に深く関与していると感じる傾向で、自分が誰であり、何をしているかについての信念であり、自分自身や仕事や家族、対人関係、社会組織などの人生の様々な状況に対して自分を充分に関わらせている傾向。

2) 挑戦性
変化が人生における常態であり、変化の予感は安全への脅威というよりもむしろ成長への興味深い誘因であるという信念。

3) 統制感
人生におけるさまざまな変化に直面したとき、自分自身がそれを統制しているのだと感じ、またそのように行動する傾向。個人が出来事の推移に対してある一定の範囲内で影響を及ぼす事ができると信じる。

ハーディネスの高い人は低い人に比べ、ストレスフルな出来事を経験してもそれを肯定的に認知し、自分でコントロールできるものであると考えることができる。
出典:◆ストレスに強いパーソナリティ特性

こういう人は、プレゼンの前に「意見を否定されたら、、、」などとつまらないことを考えたりはしません。

 

いかに聞き手をうならせるか、いかに拍手喝采を浴びるか、そういう部分に神経を集中する。

 

メンタルが弱い人にはてんで想像もつかないようなパーソナリティなのです。

メンタルが弱い≒ストレス耐性

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最後に断っておきたいのですが、確かにメンタルが弱いということは、ストレス耐性がない、というふうに言い換えても良いかもしれません。

 

しかし、あらゆる多くのストレスに耐性がないかというとそうでもないのです。

 

長時間事務作業を黙々と実行する、というのは、ある人にとっては異常なストレスかもしれません。

 

しかし余計な不安が惹起されない限りは、本エントリでいうところメンタルが弱い人でも、むしろストレスなく実行できたりするもので、

 

その忍耐力たるや他の追随を許さないほどです。

 

これは別のエントリで書こうと思いますが、結局のところ仕事というものは適性というものが一番大切なのです。

 

メンタルなどは鍛えられるから、今弱くても大丈夫、などという言説を鵜呑みにしていると、合わない仕事をさせられて、

 

もちろんメンタルなど鍛わらずますますボロボロに傷つけられ、最終的にはうつ病になってしまうリスクもあるのです。

 

あなたが「メンタルが弱いな」と思う時、その背景に「不要な不安に襲われる」という事実があるならば、それは改善不能なメンタルの弱さである、

 

ということを受け入れましょう。

 

しかし何も嘆くことはない。

 

それはあなたの短所の一つではあるものの、他に伸ばすべき能力があるに違いない。

 

そう言った長所を伸ばすことに注力すればいいのです。

 

間違っても、メンタルを強くするための変なコーチングやビジネス書に投資をしてはいけませんよ。